一次創作『ラクリマ・ディアの連結子』第三章です。
護衛と魔導士。 二人で旅をしている。
旅の中で、関係と距離が少しずつ変わっていく。
でも、それが何なのかは、まだわからない。
◾️あらすじ
王都へ向かう旅路の中で、
二人は一定の距離を保っていた。だが、その均衡は唐突に崩れる。
離れれば不安になる――
そんな不完全な状態の中で、
二人は距離を縮めることを選んだ。関係は成立しない。
それでも距離だけは、確かに近づいていく。
今日も、歩きながらパンを食べるつもりだった。
パンを取り出して割ろうとしたところを、ハルモンに止められる。
「実は、今日は良いものがあるよ」
そう言って、鞄から何かを取り出した。
「それは……肉か?」
「そう! 塩漬けのやつ。昨日お客さんからお礼でもらったんだ。炙ってパンに挟んだら美味しそうだよ」
肉を焼くのに、早めに休むことにした。
乾燥した木の枝を集めてきて、火種を入れて焚き火にする。
ハルモンの大きな鞄からは、ナイフやら金属製の串やら色々出てきた。
「……一人で王都と街を行き来していた時は、よく料理していたのか?」
「よく……ではないな。たまにね。それに、この道具は薬作る時にも使ってるやつだよ。ついでついで」
ハルモンが焚き火に枝をくべてくれているので、俺はナイフで肉を切ろうとしたのだが。
「あ……」
力加減を間違えて、自分の手を切った。
「えっ、ライ君大丈夫!?」
焚き火を見ていたハルモンが、すぐに駆けつけて傷を覗き込む。
「少しだから平気だ」
「けっこうザックリいってるよそれ。ちょっと待ってね」
ハルモンは傷口にワインをかけ、俺の手をギュッと抑えて止血する。
少しすると、出血が収まってきた。
ハルモンは鞄から薬瓶を取り出し、傷口に軟膏を塗りつけていく。
「……とりあえずこれで大丈夫かな。これ、切り傷によく効くやつだからすぐ良くなるよ」
「すまん。できると思ったんだが」
「いいって。……ライ君って戦いでは強いのに、不器用なんだね」
その後、ハルモンは慣れた手つきで肉を切り、串に刺すと焚き木で炙って、焼けたものをパンに挟んで渡してくれた。
硬いパンは肉から染みた油で、昨日よりずっと食べやすくなった。
水筒の水を飲むと、口の中に少しだけ酸味が広がる。
「……うん! これはおいしいね。……ライ君、もう一個食べる?」
食事にすっかり満足した俺とハルモンは、少しの休憩の後、使った道具を片付け、次の街を目指してまた歩き始めた。
街に着いた俺とハルモンは、まずは宿を確保した。
さっきの怪我は、すぐに手当てしてもらったものの、傷口が深く、俺は片手が使えない状態となっていた。
「そのままだと不便だし、傷口を覆えるものがあった方がいいよね。僕、買い物に行ってくるよ。ライ君は休憩してて」
ハルモンはそう言うと、扉を開けて部屋を出ていった。
扉が閉まる音を聞きながら、俺はベッドに腰を下ろす。
傷口がずきりと疼いた。
▼続きはこちら
▼前の話はこちら



コメント