#7眠りの距離

一次創作『ラクリマ・ディアの連結子』第三章です。

護衛と魔導士。 二人で旅をしている。 

旅の中で、関係と距離が少しずつ変わっていく。

でも、それが何なのかは、まだわからない。

◾️あらすじ

王都へ向かう旅路の中で、
二人は一定の距離を保っていた。

だが、その均衡は唐突に崩れる。

離れれば不安になる――
そんな不完全な状態の中で、
二人は距離を縮めることを選んだ。

関係は成立しない。
それでも距離だけは、確かに近づいていく。

食事を終え、部屋で休んでいると、外が暗くなってきた。

ハルモンがランプを持って近づいてくる。

「軟膏塗り直そう。傷見せて」

包帯を解き、傷口にあてていた布を取り外す。

ハルモンは傷口を覗き込んで確認すると、再び軟膏を塗り付けた。

塗り終わると再び布をあてて、先ほどと同じように包帯を巻いていく。

「…これでよし。…あと今日は『よく眠れる薬』も飲んでおこう」

「……よく、眠れる?」

「うん。今日は怪我してるし、ちゃんと休めた方がいいよ」

ハルモンは、紙に包まれた薬とコップを差し出した。

「傷はぐっすり寝ている間に良くなるんだ。…これ、苦くないよ」

俺は一瞬躊躇したが、さっき一人でいた時の痛みを思い出し、薬を飲むことを受け入れた。

俺が薬を飲み終えたことを確認したハルモンは、ランプの明かりを落とした。

部屋の中が完全に暗くなる。

「…じゃあ、おやすみ」

ハルモンのその言葉は聞こえていたが、返事はできなかった。

画像

耳に入ってくる賑やかな生活音で、俺は目を覚ました。

ぼんやりしながら窓の方を見ると、すでに日は高く登っていた。

「………はっ!?」

ベッドの上で勢いよく体を起こした俺を、ハルモンはにこにこ顔で見ていた。

「おはよう。…よく眠れたでしょ?」

ハルモンの薬のおかげで盛大に寝過ごし、出発は昼過ぎになった。

「そういえば、手の怪我はどう?」

「手の怪我…?」

ハルモンに言われて、俺はようやく思い出した。

(そうだ。俺は昨日、手の怪我のせいで寝かされたんだった)

包帯の巻かれた上から軽く触れてみるが、痛みはない。

包帯と布を外すと、ほとんど傷が塞がっていた。

「……治ってる…」

「よかった!…ね、すぐ治るって言ったでしょ?」

そう言って、ハルモンは満足げな笑顔を浮かべた。

俺は今更ながら、天幕生活中に女神呼びがあれだけ広まった理由に、納得した。



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この記事を書いた人

元個人事業主。
関係性オタクであり因果律職人。
成立しない関係を、成立させてしまう物語。
救いより納得。
読むと、脳が焼けます。
構造分析×FE考察×一次創作
添削・相談もやってます。

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