闇に蠢く者(以下「やみうご」という。)は、フォドラにおける「悪」として描かれることが多い。
地下に潜み、人間を操り、戦争を引き起こし、復讐のために暗躍し続けた存在。
だが、本当に彼らは単なる悪役だったのだろうか。
彼らは、フォドラで最も発達した技術文明の末裔だった。
高度な呪術、紋章石の研究、人の姿を変える技術、そして空から巨大な槍を降らせる兵器。
少なくとも、知識や技術の面では、現代フォドラを遥かに上回っていた。
それでも、彼らは滅びへ向かった。
なぜなのだろうか。
技術文明としてのやみうご
やみうごは、極めて合理的な文明だった。
役割は最初に決められる。
研究者は研究を行い、戦士は戦い、計画は長い時間をかけて遂行される。
失敗を恐れず、個体の犠牲すら許容する。
研究組織として見れば、非常に効率的だった。
実際に彼らは、女神の眷属に対抗する手段を生み出している。
紋章石を解析し、人間を兵器として利用する技術にも辿り着いた。
彼らは愚かだったわけではない。
むしろ、フォドラで最も合理的だった。
最高効率で間違う文明
しかし、やみうごには致命的な欠陥があった。
それは、自らの前提を疑えないことだ。
彼らにとっての価値とは、復讐を果たすこと。
存在理由は、女神を倒すこと。
目的は最初から決まっていた。
だからこそ、技術は進歩する。
だが、その目的そのものを見直すことはなかった。
もし疑問を持ち、自分で意味を問い始めれば、その個体は組織と衝突する。
「なぜ戦うのか」
「本当にこの復讐は必要なのか」
そうした問いは、組織そのものを揺るがしてしまう。
そのため、更新する仕組みが存在しない。
やみうごは、間違ったから滅びたのではない。
正しく、合理的であり続けたからこそ、止まることができなかったのだ。
彼らは、最高効率で間違い続けた文明だった。
ベレト計画
そんな彼らが、初めて「更新」を試みた存在がいた。
ベレト(ベレス)である。
高い戦闘能力を持ちながらも安定しており、天帝の剣に適合する存在。
やみうごにとって、それは理想的な完成形だった。
しかし、その完成形は、彼ら自身の思想を否定する存在でもあった。
もし完全成功体が、自ら考え、選び始めたなら。
その瞬間、その存在は命令を疑い、目的を問い直す。
つまり、やみうごの敵になってしまう。
完成とは、更新の始まりでもある。
だからこそ、更新不能な文明にとって、完全な成功は許容できなかった。
ベレトは、やみうごの技術と執念、そしてレアの愛情と執着によって生まれた。
その結果生まれた存在は、どちらの思想にも属さず、停滞していた世界そのものを動かしていく。
やみうごは何を間違えたのか
やみうごが間違えたのは、合理性そのものではない。
技術を追求したことでもない。
彼らが間違えたのは、目的を更新できなかったことだ。
技術は進歩した。
だが、文明は成長しなかった。
復讐という過去に囚われ続けた結果、彼らは未来を選ぶことができなかった。
停滞した神話と、暴走した技術
レアは、過去を手放せなかった。
失ったものを取り戻したいという感情によって、世界を停滞させた。
一方、やみうごは、合理性によって復讐を遂行し続けた。
どちらも、過去に囚われていた。
レアは変わらなかった。
やみうごは変われなかった。
神話も、技術も、それだけでは世界を前に進めることはできない。
だからこそ、フォドラには「ただの人間」が必要だったのだ。
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