「返してください」
エンゲージをプレイしていて、
この台詞に少し違和感を覚えた。
もちろんシーンとしては重要だ。
でも、どこか浮いている。
まるで、大切な宝物を奪われた
子供のようで、
主人公として少し情けなく感じられたのだ。
だが、後からよく考えてみると、
その違和感には理由があった。
それは、
エンゲージという作品の設計そのものに
関係している。
「返してください」の違和感
リュールには記憶がなく、
守ってくれる母も失った。
わけもわからず外に放り出された。
それでも手の中に残った指輪は
リュールにとって大切な友であり、相棒だ。
理由は、それだけだ。
世界を守ることでもなんでもない。
単純に私情である。

そう見えてしまう。
だが本当に、
これはリュール個人の問題なのだろうか。
実はここには、
『ファイアーエムブレムエンゲージ』という
作品の設計が関係している。
物語構造での支えがない設計
エンゲージでは、
物語構造を描かない設計が採用されている。
そのため、指輪についても
世界の装置としての設定が用意されていない。
これは、
指輪に宿る英雄たちを主役にするために
必要なことだった。
だが、そのことにより
指輪に宿る英雄以外のキャラクター、
とくに主人公のリュールと王族たちは
世界や国家を背負い、
結果として台詞や行動が歪んでしまう。
このシーンでのリュールは
「指輪が失なわれることで生じる問題」を
ひとりで背負った。
そのため、キャラクターが歪み
なんだか情けない主人公に見えてしまっていた。
もし指輪が世界のバランス装置だったら?
ではこの、「返してください」のシーンを
読み手の違和感がなくなるように設計しなおすと
どうなるだろうか。
指輪は、各国に同じ数ずつ安置されていた。
この理由として、例えば
「指輪を奪われると世界のバランスが崩れ、災害が起こる」
などの設定を追加してみる。
すると、指輪が奪われた時
リュールは何か言う必要はない。
悔しさや悲しみを滲ませ、
拳をぐっと握ればよい。
それだけで、プレイヤー側が
「これはまずいことになった」と
察することができる。
また、この設定を追加することで、
各国それぞれが保管していた理由にも
納得がいくようになる。
結論
リュールが情けなく見えるのは、
物語の失敗ではない。
それは、指輪に宿る英雄を主役にするために
必要なことだった。
エンゲージは、
エレオス大陸という舞台装置の世界で、
キャラクターという演者が演じる世界なのだ。
そう考えていくと、
「返してください」という台詞は、
たった一言でリュールの感情を表現しており、
むしろクオリティが高く感じられてくる。

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