#2名前の距離

一次創作『ラクリマ・ディアの連結子』第三章です。

護衛と魔導士。 二人で旅をしている。 

旅の中で、関係と距離が少しずつ変わっていく。

でも、それが何なのかは、まだわからない。

◾️あらすじ

王都へ向かう旅路の中で、
二人は一定の距離を保っていた。

だが、その均衡は唐突に崩れる。

離れれば不安になる――
そんな不完全な状態の中で、
二人は距離を縮めることを選んだ。

関係は成立しない。
それでも距離だけは、確かに近づいていく。

宿で食事を済ませると、俺とハルモンは次の街に向かって出発した。

次の街へは、朝からゆっくり歩いて昼前後には到着できる予定だ。

今日のハルモンは、やけに静かだ。

しばらく、無言で歩いた。


道の途中にちょうどいい大きさの切り株を見つけ、腰掛けて一休みしていた時、ハルモンが口を開いた。

「……昨日、店で君の名前を出したら騒ぎになったでしょ?だから、もうあまり外で名前を出さない方がいいと思ったんだ」

「……そうだな」

「それで……ライ君、ってのはどう?もう騎士じゃない、新しい君の名前」

「……俺は分かればいい。好きに呼べ」

俺がそう言うと、ハルモンはにこりと笑顔になった。

「ふふっ。じゃあ今日から君はライ君だね!あらためて、よろしくね」


休憩を終えて、また歩き出す。

ハルモンは、もういつも通りだった。

今日は、『会話が終わった後に“楽しかったかどうか”だけ分かる薬』を試しているらしい。

本人は「記録用」と言うが、楽しかったかどうかは本人に聞けばいいと思う。

「……あ、今のは楽しかったみたいだね」

「その報告はいらん……」













街に到着したのは、昼を少し過ぎた頃だった。

ハルモンは、この街に泊まったことはないらしい。

いつも通過するだけだそうだ。

食事をして、今日も早めに宿で休むことにする。

「前はもっと歩けたのにな〜。すっかり体力落ちてる……」

部屋に入って早々ベッドに倒れ込んだハルモンは、そうぼやいた。

「だろうな。……だが、急ぐわけではないんだろう?ゆっくり戻していけばいい」

ハルモンは何も言わず、ベッドの上でころりと寝返りを打つ。

その直後、「あ!」と言って起き上がった。

「明日は『疲れにくくなる粉』を使ってみようかな?」

「やめておけ……。どうせ限界超えて、後で倒れるやつだろ」

「確かに、その可能性は高いね」

「……お前は、実験に全力すぎだ」

俺は、ずっとハルモンの話を聞いているうちに、いつの間にかハルモンの薬の傾向を読めるようになっていた。













僕は、鞄の中から薬道具を取り出してテーブルに広げ、作業していた。

昨日、ライ君が疲労回復薬を飲んでしまったので、新しいものを作るつもりだ。

配合バランスを調整し、完成した試作品を瓶に入れる。

「あれは回復効果は高かったけど、情動依存の副作用が強すぎた。配合のバランスがなかなか難しいね……」

すると、ライ君はギョッとした顔をした。

「お前……またアレを作ってるのか……!?」

「同じではないよ!ちゃんと改良してる。だから、今度は安心して飲んでね」

「飲めるか」

ライ君はこちらに歩いてくると、机の上の瓶を手に取った。

「自分で飲め」

「え、むぐ……うわ、苦っ!」

画像

次の日の朝、鍛錬を終えて一休みしていると、ようやくハルモンが目を覚ました。

「起きたか。……効き目はどうだった」

ハルモンは、まだ少し眠そうにしている。

「ん〜、良くも悪くも……。さらなる改良が必要だね」

「まだ作り続ける気か」












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この記事を書いた人

関係性オタク。
成立しない関係を、成立させてしまう物語。
救いより納得。
読むと、脳が焼けます。
構造分析×一次創作
添削・相談もやってます。

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