#4再会の温度

一次創作『ラクリマ・ディアの連結子』の第二章です。

救いは、いつも正しいとは限らない。

人を救うために差し出された手は、 どこまで届き、どこから壊れていくのか。

魔導士と剣士。

二人の関係が、静かに形を変えていく物語。

——その選択が、すべてを変えるまで。

◾️あらすじ

港町マレディアを襲った炎は、
すべてを奪い去った。

人々を救うため、ハルモンは力を使い続ける。
その代償として、自らの身体と日常を失いながら。

“女神”と呼ばれる存在と、
それを支える騎士。

救いは、本当に正しいのか。
その選択が、二人の関係を大きく変えていく――。

目を覚ますと、見慣れない天井が広がっていた。

黄色っぽい布越しに、日の光が滲んでいる。
外から、かすかな話し声。

顔を少し横に向けると、垂れた布が少し風で揺れて、細く外の景色が見える。

ぼんやりした頭で考える。

(確か、怪我人の治療をしていて、休憩しろと言われたんだ。その後――)

そこで、意識が途切れる寸前に考えていたことを思い出した。

「あ……!カライス君は……!?」

慌てて体を起こすが、バランスを崩して横に倒れ込んでしまう。

同時に、胸から込み上げる嫌な感覚がして、堪えきれずその場で嘔吐した。

「大丈夫ですか!?」

外にいた騎士が、咳き込む音で異変に気づき駆けつけてくれた。

僕の様子を見て、「誰か!急いで水桶と拭くものを持ってきて!」と叫ぶ。

すぐに数人が駆けつけ、汚してしまったところをテキパキ片付けてくれた。

「……魔導士様、まだ安静にしていてください。昨日はそうとう無理をされたと聞きましたよ」

「す……すみません……」

「まずはお休みになって、落ち着いたら少しずつ水分を摂りましょう。……いま飲み水をお持ちします」

「あ、あの……!」

天幕を出ていこうとした騎士を呼び止める。

「はい、他にも何か必要でしたか?」

「カライス君は……無事ですか……?生きてますか……」

「ああ、彼なら大丈夫です!今回の戦闘でも、あれだけ戦果を上げても傷一つ負わず。お知り合いだったんですね。……水は彼に持って来させましょう」

そう言って、騎士は天幕を後にした。

手当用の物資の運搬を手伝っていると、女性騎士から「ちょっといい?」と声をかけられた。

「……?どうした」

「”女神様”の意識が今さっき戻ったの。でもかなり調子が悪いみたいで、吐いてしまわれたわ。……落ち着いたら水分をとってもらいたいんだけど、今の作業が終わったら持っていってもらえる?……あなたのこと、気にかけてたわよ」

「……了解した」

俺はすぐに荷物運びを終わらせると、水差しを持ってハルモンのいる天幕に急いだ。

ハルモンは客人扱いで、一人用の天幕で休んでもらっていた。

天幕の入り口に垂れた布を捲り上げ、中の様子を伺うと、ハルモンが力なく横たわっていた。

ハルモンは目を閉じ、ゆっくりと呼吸をしている。

いつも束ねられていた髪が解かれ、枕の上に広がっていた。

(寝ている……?)

音を立てないよう天幕に入る。

気配に気づいたのか、ハルモンの目がゆるく開いた。

俺を見る。

しばらくして、少しだけ微笑む。

潤んだ瞳から、涙がこぼれた。

その姿だけは、確かに――

女神様のように見えた。

俺はしばらくその姿を見つめていた。

「……水を持ってきた。落ち着いたら飲んでくれ」

そう言って、ハルモンのそばに水差しを置くと、俺はすぐに天幕を出た。

ハルモンの天幕を出た後、俺は張られた天幕の間をしばらく歩いていたが、はたと思いついて立ち止まる。

(あいつ、自分で飲めるのか……?)

さっき吐いたと聞いたし、かなり弱った様子だったことを思い出す。

俺は踵を返し、来た道を戻る。

天幕を覗くと、ハルモンはさっきと同じ姿勢で横になっていた。

目は半分閉じている。

「……起きてるか」

小さく声をかける。

返事はない。

だが、呼吸が少し揺れた。

俺は水差しを手に取り、ハルモンの肩をそっと支える。

体は思ったより軽かった。

そして、体が熱い。

「……飲め」

唇に水差しを当てる。

ハルモンの喉が、かすかに動いた。












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この記事を書いた人

関係性オタク。
成立しない関係を、成立させてしまう物語。
救いより納得。
読むと、脳が焼けます。
構造分析×一次創作
添削・相談もやってます。

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