先日、企画用に書いた短編『湊先輩とパンケーキ』をソリスピアへ投稿してみた。
すると、面白い機能を見つけた。
二人のAI編集者にレビューを書いてもらえるというものだ。
せっかくなので、辛口編集者に読んでもらうことにした。
頼んだ後、私は少しわくわくしていた。
なぜなら、この作品は読者によって感想がかなり分かれていたからだ。
AIは何を読むのか
これまで、読んでいただいた方から頂いた感想は様々な内容だった。
「初恋っぽい」
「緊張感がある」
「かわいい」
「恋愛コミュニケーション論みたい」
同じ作品を読んでいるのに、見えているものが違う。
では、AI編集者は何を見るのだろう。
実際に返ってきたレビュー
私が予想していたのは、「主人公の行動原理が分からない」と言われることだった。
ところが実際には、「主人公の不安」「先輩との距離感」「甘い緊張感」といった部分は普通に読めていた。
ただ、その読み方は人間とは少し違っていた。
読者からは「緊張感がある」「張り詰めている」という感想を多く頂いたのだが、AIは同じ箇所を「会話が冗長で展開が停滞している」と読んでいた。
これはなかなか興味深かった。
人間が感じた違和感や緊張を、AIは物語の停滞として解釈していたのである。
……なるほど。
同じものを見ても、見え方は違うらしい。
そう思った。
そして私は安心した。
少なくとも、この作品はちゃんと伝わっている。
問題はその次だった。

『性別を超えた自己表現に共感できる読者には特におすすめ』
私は思わず二度見した。
性別を超えた自己表現。
どこから出てきた。
いや、その主人公は自己表現していない
実は『湊先輩とパンケーキ』の主人公は、自分を表現する方向には動いていない。
むしろ逆だ。
湊先輩に合わせる。
空気に合わせる。
正解に合わせる。
紅茶もそう。
パンケーキもそう。
自分が何を好きかより、「何を選ぶのが正しいか」を優先している。
だから作者視点では、自己表現というより自己消去に近い。
ところが、AIはそこから「自己表現」を読んだ。
……ダメだ、面白すぎる。
AIは何を見ていたのか
おそらくAIは、「女装」「先輩との関係」「BL的な配置」といった記号から意味を補完したのだと思う。
確かに外側だけを見ると、そういう物語にも見えなくもないかもしれない。
完全な誤読とも言い切れない。
そして、この「少しズレている」が妙に面白かった。
人間の方が近づいた例もあった
以前行った創作実験で、灯屋いと様がこの作品を書き換えてくださった。
その際、主人公が先輩をミラーリングし続けていること。
自分を出していないこと。
そういった部分を掘り当てていた。
もちろん、作者の意図していた解釈とは少し違う。
しかし、見ていた場所はかなり近い。
だが結果として、AIよりも人間の方が作品の核へ近づいていた。
AIは恋愛を読み、人間は違和感を読んだ
今回の観測で面白かったのは、AIが読めなかったことではない。
むしろ普通に読めていた。
ただし、AIは整合性の高い物語を作ろうとする。
だから恋愛へ向かう。
一方、人間は違和感を追いかける。
だから時々、作者も想定していなかった場所まで掘る。
今回の実験では、その差をよく見ることができた。
おわりに
私は作品の感想を読むのが好きだ。
なぜなら、作品を通して読んだ人の頭の中が見えるからだ。
今回、新たにAI編集者という観測対象が増えた。
AIは恋愛を読んだ。
人間は違和感を読んだ。
そして私は、「性別を超えた自己表現」という謎概念を生み出したAI編集者を見て大笑いしていた。
どうやらこの機能、私にとっては編集ツールではなく新しい観測装置らしい。
次はどんな誤読をしてくれるのか、少し楽しみである。



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