#1観察がうまくいかない日

この物語は、本編『ラクリマ・ディアの連結子』の公式二次創作です。

ゆるい日常の中で、少しだけ距離が近い二人の話。

※単体でも読めます


今日は、少しおかしい。

理由はわからないけど、何かがいつもと違う。
体調が悪いわけではないし、環境が変わったわけでもない。
強いて言えば、ほんの少しだけ――距離が近い。

隣にいるライ君との距離が、いつもよりわずかに近い気がする。

とはいえ、それはいつもと比べて大した差じゃない。
数センチ、もしかするとそれ以下かもしれない。
でも、そのわずかな差が、なぜか気になってしまう。

僕は一度、視線を逸らしてから、改めて状況を確認してみた。

(……やっぱり近い)

ライ君は特に何も言わず、いつも通りの様子でそこにいる。
こちらを見ているわけでもなければ、何かを仕掛けてくるわけでもない。

つまり、原因は不明だ。

僕はしばらく考える。

距離が近い理由。
その影響。
再現性の有無。

いくつか仮説は立てられるけど、どれも決定打には欠けている。

そもそも、この程度のことにここまで意識が向く理由も、よくわからない。

(……まあ、いいか)

嫌じゃないし。
むしろ、どちらかといえば落ち着く気がする。

そう結論づけて、僕は思考を打ち切ることにした。

問題ないなら、無理に解明する必要もなし。

僕はそのまま、再び手元の作業に視線を戻した。

隣には、ライ君がいる。

距離は、さっきと同じままだ。

――少しだけ、近いまま。


今日は、少し近い。

理由はわかっている。
……言うつもりはない。

ハルモンは気づいている。
だが、理由までは辿り着いていない。

さっきから、わずかに落ち着きがない。
視線が揺れて、思考に潜って、そして戻ってくる。

そのたびに、距離は変わらない。

離れないのか、離れられないのかは知らないが、
どちらでもいい。

問題はない。

少しだけ様子がおかしいが、
嫌がっている様子はない。

なら、そのままでいい。

無理に理由を与える必要も、
名前をつける必要もない。

今のままで、成立している。

俺は何も言わず、そのまま隣にいる。

距離は、少しだけ近い。

それで十分だと思った。


僕は、昨日のことを、少し思い出している。

結局そのまま、特に問題は起こらなかった。
嫌でもなかったし、作業もいつも通り進んだ。

でも――

やっぱり、少しおかしい気がする。

僕は視線を上げて、隣を見る。

ライ君がいる。

距離は、昨日とほとんど変わっていない。

(……近い)

昨日と同じように、
ほんのわずかだけど、近いままだ。

僕はしばらく考える。

これは、偶然なんだろうか?
それとも、何かしらの条件によって再現されている状態?

もし再現性があるなら、
それは観察対象として成立するはず。

でも――

なぜか、うまく考えがまとまらない。

思考が途中で止まる。

……おかしい。

原因を特定しようとすると、
なぜか別のことに意識が逸れてしまう。

視線とか、
呼吸とか、
距離とか。

普段なら気にならないようなことに
やたら意識が向いてしまう。

これは、明らかに普通じゃない。

僕は一度、深く息を吐く。

落ち着こう。

順番に整理しよう。

けれど――

「……なんか、近くない?」

不意に、そんな言葉が口から漏れてしまった。

ライ君は何も言わない。

そのまま、そこにいる。

距離も、変わらない。

(……まあ、いいか)

結局、僕は昨日と同じ結論に戻ってきた。

嫌じゃない。

それどころか、
むしろ――

少しだけ、落ち着く。

理由はわからないままだけど、
それでも問題はない。

僕は考えるのをやめて、
そのまま隣にいることにした。

距離は、変わらない。

少しだけ、近いまま。











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この記事を書いた人

関係性オタク。
成立しない関係を、成立させてしまう物語。
救いより納得。
読むと、脳が焼けます。
構造分析×一次創作
添削・相談もやってます。

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